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アイティフォー(4743)|利回り4.8%でも僕が迷う理由【高配当株の通信簿②】

アイティフォー(4743)の記事アイキャッチ。会社が掲げる還元方針と筆者の採点基準を天秤に乗せ、両者が釣り合っていないことを示した図
タロ

高配当株を一社ずつ見ていくシリーズ「高配当株の通信簿」。2社目はアイティフォー(証券コード4743)です。

このシリーズは、僕自身の勉強と記録を兼ねた備忘録です。「この株を買いましょう」とおすすめするものではありません。会社が出している資料を自分で読んで、いいと思ったところ、気になったところを正直に書いていきます。

今回この会社を取り上げたのは、調べていくうちに「これは他人事じゃないな」と思ったからです。地方公務員である僕の職場と、まっすぐつながっている会社でした。

そして前回の東計電算とは、まったく逆のことが起きていました。前回は「数字は良く見えたけれど、中身を読んだら一時的だった」。今回は「数字は基準に引っかかったけれど、中身を読んだら事情が違った」。順番に書いていきます。

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アイティフォーは、何をしている会社なのか

「督促の電話を、自動でかけるシステム」の会社です

会社の説明を、そのまま引用します。

「債権の督促を行う『延滞債権管理システム(オートコールシステム)』を1983年に日本で初めて開発し、国内の70%超の地方銀行様から採用いただくなど、金融機関における債権回収業務システムの分野で圧倒的なシェアを獲得しています」

かみ砕いて言うと、こういうことです。住宅ローンやカードの支払いが遅れている人に、「お支払いの確認です」と自動で電話をかけるシステムです。銀行が人手でやっていた督促の電話を、機械が代わりにかける。1983年、日本で最初に作ったのがこの会社でした。

地味です。でも、日本の地方銀行の7割超がこのシステムを使っていると聞くと、印象が変わりませんか?
40年以上かけて積み上げた、他社が簡単には崩せない立ち位置です。

地方公務員の僕には、他人事ではありませんでした

調べていて手が止まったのが、ここです。この会社の事業一覧に、こう書いてあります。

「自治体DXを支援するソリューションを提供。滞納管理システム、電話やSMSでの催告システム、給食費管理など教育委員会向けソリューションなど。アイティフォーグループによるBPO(民間委託)サービスも」

滞納管理。催告。給食費管理。まさに、僕らが役所でやっている仕事そのものです。

さらに2026年3月期の決算短信には、業績を押し上げた要因としてこう書かれていました。「公共分野における『自治体情報システム標準化』への対応も、当期の業績拡大を牽引する極めて大きな要因となりました」

自治体情報システムの標準化というのは、全国の市町村がバラバラに使っていた基幹システムを、国が決めた共通仕様に合わせる作業のことです。いま全国の役所で進んでいる、大がかりな話です。僕も数年前に関係する部署にいたのでわかるのですが、かなり大変でした。ほんといろいろな仕様が変わってしまい現場は大混乱です。その特需が、この会社の売上になっている。

自分の職場で起きていることが、そのまま一社の決算に出てくる。投資の勉強をしていて、こういう瞬間はちょっと面白いなと思います。

収益の柱は2つあります

会社は事業を2つに分けて報告しています。2026年3月期の数字です。

セグメント売上高セグメント利益受注高
システム開発・販売136億71百万円
(前期比 118.6%)
19億56百万円
(115.0%)
150億65百万円
(137.3%)
リカーリング(保守サービス)94億29百万円
(104.4%)
19億03百万円
(103.9%)
92億52百万円
(99.8%)

前者はシステムを作って売る仕事。後者の「リカーリング」は、会社の言葉を借りると「安定収益源である保守サービス」、つまり毎年決まって入ってくる保守料や業務受託の売上です。

注目したいのは、売上はシステム開発のほうが1.5倍近く大きいのに、利益はほぼ同じという点です。19億56百万円と19億03百万円。つまりリカーリングのほうが、少ない売上で同じだけ稼いでいる。利益率でいえば約20%対約14%です。

作って売るだけの会社ではなく、売ったあと毎年お金が入ってくる仕組みを持っている。ここがこの会社の強さだと思います。

いま、この会社に起きていること

① 受注が37%増えています

上の表でいちばん目を引くのが、システム開発・販売の受注高137.3%です。109億74百万円から150億65百万円へ。

受注高というのは、「これから作る約束をした仕事の量」です。売上より先に動く数字なので、来期以降の見通しがここに出ます。会社が2027年3月期に売上+21.2%、営業利益+24.4%という強気の予想を出しているのは、この受注残があるからでしょう。

背景も決算短信に書かれています。地方銀行の再編で顧客数そのものは減っていくなかで、地方銀行系列のカード会社・リース会社・保証会社へ横展開し、さらに自治体の標準化対応を取り込んだ、と。

② 配当を1.6倍にしました。ただし今回は「一時的」ではありません

配当の推移です。会社のIRサイトに載っている数字をそのまま並べます。

決算期2023年3月期2024年3月期2025年3月期2026年3月期2027年3月期(予想)
1株配当30円40円50円80円80円
配当性向36.2%39.3%46.3%76.7%63.3%
自己株買い09億円9.31億円02.27億円
総還元性向36.2%71.8%77.3%76.7%63.3%
1株配当(円)02550751003040508080配当性向(%)050100僕の基準ライン 60%(これを超えると対象外)36.2%39.3%46.3%76.7%63.3%2023/32024/32025/32026/32027/3予

1株配当と配当性向の推移(出典:会社IRサイト「株主還元・配当」/2027年3月期は会社予想)

50円から80円へ、1.6倍の増配です。ここで配当性向が76.7%まで上がりました。僕の基準では「60%以上は対象外」ですから、機械的にはアウトです。

ただ、前回の東計電算とは事情がまったく違いました。会社が配当の方針をはっきり書いていたからです。

「安定的かつ継続的に配当を行うことを基本とし、配当性向50%目標、総還元性向70%以上、および累進配当を基本方針としております」

ここに出てくる「累進配当」という言葉が大事です。意味は「減配しない。維持するか、増やすかのどちらかにする」という約束です。

前回の東計電算の増配は、持っていた株を売って得た一時的なお金が原資でした。だから来年は続きません。今回の増配は、会社が決めた還元方針にもとづくものです。同じ「配当性向が高い」でも、意味がまるで違います。

僕の12項目で採点してみる

では採点します。基準はこちらの記事にまとめています。前回と同じく、会社が公表している資料だけを使いました。

使った数字出典と時点
過去10期の営業CF・現金各期の決算短信(2017年3月期〜2026年3月期の10期分)
過去6期の業績・貸借対照表会社IRサイトの連結財務諸表(2021年3月期〜2026年3月期)
配当の推移・配当方針会社IRサイトの株主還元・配当ページ
実績の各指標・セグメント2026年3月期 決算短信(2026年5月14日)
今期の会社予想同上(2027年3月期の連結業績予想)
直近の四半期2027年3月期 第1四半期決算短信(2026年8月12日)
株価2026年9月1日の終値 1,666円(市場価格)
利回り・PER・PBR上記をもとに僕が計算したもの

読むタイミングによって数字は変わります。最新の数字はご自身でも確認してみてください。

アイティフォー4743・東証プライム
○ 8△ 2✕ 2
評価項目ひとことメモ判定
①売上162.9億(2021年3月期)→231.0億(2026年3月期)。微減は1回のみ○合格
②EPS108.09円→104.27円と直近で減少。今期予想は128.48円△注意
③営業利益率16.7%(2026年3月期)。基準5〜10%を上回る○合格
④自己資本比率73.6%。安心の60%超。ただし前期79.5%から低下○合格
⑤営業CF10期すべて黒字(2017〜2026年3月期)。15.3億→30.9億○合格
⑥現金60.3億(2017年)→89.1億(2026年)と長期では増加。ただし115.0億(2024年)をピークに減少中△注意
⑦1株配当30→40→50→80円と増配継続。累進配当を方針で明示○合格
⑧配当性向76.7%(2026年3月期)。基準の60%を大きく超過✕未達
⑨配当利回り4.80%(80円÷1,666円)。買い目安3.75%を上回る○合格
⑩ROE / ROA13.9% / 9.8%(2026年3月期)。どちらも合格ライン○合格
⑪PER / PBR13.0倍 / 2.13倍。PBRが基準の1倍前後から遠い✕未達
⑫不祥事調べた範囲では特になし○合格
総合メモ
本業は堅調で、受注は37%増。営業CFは10期連続で黒字。累進配当を方針として明示している点も心強い。ただし⑧配当性向76.7%が「一発アウト」の60%を超えるため、基準どおりなら見送り。前回のような一時的な増配とは、性質がまるで異なる。
›採点の基準(12項目のものさし)を見るタップで開く
①売上右肩上がりか/増減が激しすぎないか
②EPS(1株当たり利益)右肩上がりか
③営業利益率5%以上(10%を超えれば優秀)/右肩上がりか
④自己資本比率最低40%・安心60%・優秀80%
⑤営業CF(営業活動によるキャッシュ・フロー)毎年黒字/長期的に増加傾向(過去10年で赤字があれば対象外)
⑥現金長期的に現金が増えているか
⑦1株配当減配・無配がないか/配当金の成長性はあるか
⑧配当性向(配当総額÷純利益)健全30〜50%・要警戒50〜60%・60%以上は対象外
⑨配当利回り買い3.75%以上・要検討3〜3.75%・3%以下は対象外
⑩ROE(自己資本利益率)/ ROA(総資産利益率)ROE 10%以上・ROA 8%以上
⑪PER(株価収益率)/ PBR(株価純資産倍率)PER 12倍以下・PBR 1倍前後
⑫不祥事不祥事を起こしていないか

◎ 一発アウト(3つ):①営業CFが過去10年で1度でも赤字/②配当性向60%以上/③配当利回り3%以下 ― どれか1つでも当てはまれば、他が良くても「見送り」。

まとめ ― 基準では見送り。でも前回とは事情が違う

採点結果は○8・△2・✕2。営業キャッシュフローは2017年3月期まで遡って10期分を確認しましたが、赤字の期は一度もありませんでした(最も少ない2019年3月期でも8.99億円の黒字)。⑧配当性向が「一発アウト」の項目に当たるので、僕の基準どおりなら総合判定は見送りです。

ただ、前回の東計電算と同じ「見送り」でも、中身は正反対でした。そこを書いておきたいと思います。

引っかかったのは配当性向。でも、その中身が違う

僕がこの基準に「60%以上は対象外」と置いているのは、利益に対して無理をして配っている会社は、いずれ減配するからです。配当が減れば株価も下がる。高配当株でいちばん怖いのがそれです。

では今回はどうか。会社が公表している還元方針は、次の3つです。

会社が掲げる方針2026年3月期の実績
配当性向 50%目標76.7% ― 目標を大きく超過
総還元性向 70%以上76.7% ― 達成
累進配当(減配しない)30→40→50→80円 ― 維持

ここは丁寧に読む必要がありました。配当性向76.7%は、会社が掲げる「50%目標」からは大きく外れています。方針どおりの数字ではありません。

ではなぜ76.7%になったのか。答えは自己株買いにありました。会社は還元の方法として、配当と自己株買いの2つを使い分けています。

決算期配当性向自己株買い総還元性向
2024年3月期39.3%9.00億円71.8%
2025年3月期46.3%9.31億円77.3%
2026年3月期76.7%076.7%
2027年3月期(予想)63.3%2.27億円―

2026年3月期だけ、自己株買いがゼロです。会社は注記で「総還元性向70%以上まで自己株買いもしくは増配を予定」と書いています。つまり自己株買いをしない年は、そのぶん配当を厚くして70%を満たすという運用です。その結果が76.7%でした。

言いかえると、76.7%を生んだのは「配当性向50%目標」ではなく「総還元性向70%以上」のほうです。そして僕の12のものさしが見ているのは、総還元性向ではなく配当性向です。会社が重く見ている指標と、僕が採点に使っている指標が、そもそも違いました。

ちなみに、この表の数字は会社のIRサイトからそのまま引いていますが、2027年3月期予想の総還元性向は公表値と計算が合いませんでした(公表は63.3%、総還元額2,380百万円を会社予想の純利益3,400百万円で割ると70.0%)。方針の「70%以上」と整合するのは後者なので、ここは空欄にしています。

2027年3月期の予想では、配当を80円で据え置いたまま配当性向は63.3%に下がる見込みです。利益が伸びるうえ、自己株買いを再開する計画だからです。それでも会社が掲げる「50%目標」には届きません。

前回の東計電算は、持っていた株を売った一時的なお金が増配の原資でした。だから来年は続きません。今回は「総還元性向70%以上」という継続的な約束を果たすために配当が厚くなっています。配当性向が高いという同じ結果でも、原因がまったく違います。

それでも僕がすぐに買わない理由

では買うのかというと、僕はいったん見送ります。理由は3つです。

ひとつ目は、PBRが2.13倍だということ。1株あたりの純資産780円48銭に対して、株価は1,666円。僕の基準は「1倍前後」なので、ここは素直に高いです。会社の中身に対して、株価が先に評価されている状態だと思います。

ふたつ目は、利益がいったん減っていること。2026年3月期は売上が12.4%伸びたのに、最終利益は5.4%減りました。1株あたりの利益も108円09銭から104円27銭へ。子会社を3社増やした年なので一時的な費用もあるはずですが、「利益が減った年に配当を1.6倍にした」という形にはなっています。だから配当性向が跳ねた。

みっつ目は、手元の現金が減っていること。2024年3月期の115.0億円から、2026年3月期は89.1億円まで減りました。買収と株主還元に使ったぶんです。悪いことではありませんが、累進配当を続けるための体力は見ておきたいところです。

会社の予想どおり今期に利益が伸びて、配当性向が63%まで下がってくるかどうか。そこを1年見てから判断しても遅くない、というのが今の僕の結論です。買わない理由がはっきりしているうちは、待つのが性に合っています。

もちろん、僕の見方が間違っている可能性も十分にあります。あくまで一個人の備忘録として、読んでいただければ幸いです。

僕がこういう株を買っている証券会社について

「こういう高配当株って、どこで買っているんですか?」と、たまに聞かれることがあります。僕は、SBI証券を10年以上使っています。理由やメリットは長くなるので、別の記事にまとめました。証券会社選びで迷っている方は、よかったらこちらもどうぞ。

SBI証券の魅力を徹底解説!初心者にもわかりやすいメリットまとめ

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免責事項

本記事は情報提供および筆者個人の記録を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨・勧誘するものではありません。記載した数値は、株式会社アイティフォーが公表した決算短信およびIRサイト掲載資料、ならびに市場で公表された株価にもとづき、筆者が上記の各時点で確認・計算したものです。正確性・最新性を保証するものではなく、とくに株価に連動する指標(PER・PBR・配当利回り)は日々変動します。投資の最終的な判断は、ご自身の責任と調査に基づいて行ってください。
※本記事には広告(アフィリエイトリンク)を含む場合があります。

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タロ@安定と挑戦の二刀流
タロ@安定と挑戦の二刀流
地方公務員×中小企業診断士×FP1級
地方在住の現役地方公務員。中小企業診断士。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。英検準1級。資格取得や投資、副業の経験を通じて得たノウハウを発信しています。学び直しや収入源の多様化に興味がある方に、実体験に基づくヒントをお届けします。 株式投資については、NISAのつみたて投資枠・iDeCoを活用した長期投資とNISA成長投資枠を活用した高配当株投資を中心に、12年ほど続けています。不動産は、個人で小規模なアパート(1棟6室)を所有しているほか、配偶者が代表を務める法人でもアパート1棟(8室)を保有しています。
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