経済指標の見方|FP1級の僕が毎月見ている7つ
経済のニュースは毎日流れてきますが、数が多すぎて何を見ればいいのか分からなくなります。僕は7つに絞って毎月見ていくことにしました。リベラルアーツ大学の両学長が挙げていた7つです。
この記事は、その7つがそれぞれ何を測る指標で、誰が、いつ、どこで出しているのかをまとめたものです。毎月の数字そのものは別の記事に書いていきます。
数字の出どころはすべて、内閣府・総務省統計局・厚生労働省の公表資料です。定義の説明も、各省庁が書いている文言から取りました。
7つの指標と、それを出しているところ
| 指標 | 出しているところ | 何を測る指標か |
|---|---|---|
| ①月例経済報告 | 内閣府 | 統計を見た政府の景気判断 |
| ②GDP | 内閣府 | 国内で生み出された付加価値の合計 |
| ③景気動向指数 | 内閣府 | 複数の統計を合成した景気の方向 |
| ④景気ウォッチャー調査 | 内閣府 | 現場で働く人が感じている景気 |
| ⑤消費者物価指数 | 総務省統計局 | 家計が買うモノとサービスの値段 |
| ⑥実質賃金指数 | 厚生労働省 | 物価を差し引いたあとの給料 |
| ⑦完全失業率 | 総務省統計局 | 働きたいのに働けていない人の割合 |
4つが内閣府、2つが総務省統計局、1つが厚生労働省です。全部、無料で誰でも見られます。
発表された月と、中身の月はずれる
7つを同じ月に並べて見ようとすると、最初にぶつかるのがこれです。指標によって、発表までにかかる時間がまったく違います。
| 指標 | 中身の期間 | 発表までの間隔 | 2026年8月の実例 |
|---|---|---|---|
| 月例経済報告 | その月 | 同じ月の下旬 | 8月27日 |
| 景気ウォッチャー調査 | 前の月 | 約10日 | 7月調査 → 8月10日 |
| 消費者物価指数(全国) | 前の月 | 約3週間 | 7月分 → 8月21日 |
| 完全失業率 | 前の月 | 約4週間 | 7月分 → 8月28日 |
| 実質賃金指数 | 2か月前 | 約5週間(速報) | 6月分 → 8月5日 |
| 景気動向指数 | 2か月前 | 約5週間(速報) | 6月分 → 8月7日 |
| GDP | 四半期 | 約7週間(1次速報) | 4-6月期 → 8月17日 |
各指標の公表資料をもとに作成。
「発表までの間隔」は、対象になっている期間の終わりから発表日までの長さです。
月の前半に出るのは、実はいちばん古い期間を見ている指標です。2か月前の話が月初に来て、先月の話が月末に来ます。
GDPだけは四半期に1回なので、出る月は2月・5月・8月・11月だけです。それ以外の月は6つになります。
①月例経済報告|政府がどう見ているか
これだけは統計ではありません。内閣府が、各種の統計を見たうえで「政府としてはこう見ている」とまとめた文書です。
いつ出るか:毎月下旬。2026年は2月から8月まで、いずれも23日から30日のあいだに出ています。
どこを見るか:冒頭にある「基調判断」の一文です。ここに景気全体の見方が1行でまとまっています。あわせて、個人消費・設備投資・輸出・雇用情勢など個別項目の表現を見ます。
つまずきやすいところ:基調判断の一文が前月と同じでも、個別項目の表現は動いていることがあります。むしろそちらが先に動きます。資料では前月から変えた部分に下線が引いてあるので、そこだけ追えば変化が分かります。
②GDP|経済全体の大きさ
国内で生み出された付加価値の合計です。3か月分をまとめて、四半期に1回発表されます。
いつ出るか:1次速報が四半期の終わりから約7週間後(2月・5月・8月・11月の中旬)。2次速報はその約3週間後です。2026年4-6月期なら、1次速報が8月17日、2次速報が9月8日でした。
どこを見るか:実質の前期比。そして、そのプラスやマイナスを何が作ったのか(内需と外需の寄与度)です。
つまずきやすいところ:3つあります。
- 「年率」は換算値です。前期比+0.3%が「年率+1.1%」になるのは、このペースが1年続いたらどうなるかを計算したもので、1年でそうなるという意味ではありません
- 実質と名目は別物です。物価が上がっている局面では、名目のほうが大きく出ます
- 純輸出は「輸出−輸入」です。輸出が伸びなくても、輸入が減ればプラスになります。「外需がプラス」の中身は毎回確かめる必要があります
③景気動向指数|機械的に方向を判定する
生産・雇用・販売など、景気に敏感に反応する統計を合成して1本の指数にしたものです。内閣府はこう説明しています。
景気動向指数は、生産、雇用など様々な経済活動での重要かつ景気に敏感に反応する指標の動きを統合することによって、景気の現状把握及び将来予測に資するために作成された指標である。
CIとDIの2種類があります。ふだんニュースで見るのはCIのほうです。
CIは構成する指標の動きを合成することで景気変動の大きさやテンポ(量感)を、DIは構成する指標のうち、改善している指標の割合を算出することで景気の各経済部門への波及の度合い(波及度)を測定することを主な目的とする。
さらに、先行・一致・遅行の3本に分かれます。採用しているのは先行11系列、一致10系列、遅行9系列の合計30系列です。使い分けも内閣府が書いています。
景気の現状把握に一致指数を利用し、先行指数は、一般的に、一致指数に数か月先行することから、景気の動きを予測する目的で利用する。遅行指数は、一般的に、一致指数に数か月から半年程度遅行することから、事後的な確認に用いる。
いつ出るか:対象月の翌々月の上旬に速報、その約3週間後に改訂です。
どこを見るか:CI一致指数の数値と、そこに付く「基調判断」です。
つまずきやすいところ:基調判断は担当者の感覚ではなく、決められた基準で機械的に決まります。「原則として3か月以上連続して3か月後方移動平均が上昇し、当月の前月差がプラス」なら改善、といった具合です。だから前月から判断が変わらないことも多く、変わったときの意味が大きくなります。
もうひとつ、内閣府自身がこう注意書きを付けています。
景気動向指数は、各経済部門から選ばれた指標の動きを統合して、単一の指標によって景気を把握しようとするものであり、すべての経済指標を総合的に勘案して景気を捉えようとするものではないことに留意する必要がある。
この指数ひとつで景気が分かるわけではない、と作っている側が書いています。7つ並べて見る理由がここにあります。
④景気ウォッチャー調査|現場の実感
タクシー運転手、コンビニの店長、人材派遣会社の担当者など、景気の動きを身近に感じられる仕事の人にたずねる調査です。統計を積み上げたものではなく、アンケートです。
いつ出るか:調査した月の翌月8日から13日ごろ。7つのなかでいちばん早く出ます。
どこを見るか:景気の現状判断DIと、2〜3か月先の先行き判断DI。50が分かれ目で、50を上回れば「良くなっている」と答えた人のほうが多く、下回れば「悪くなっている」と答えた人のほうが多い、という読み方をします。
つまずきやすいところ:統計ではないので、精度を求める指標ではありません。そのかわり、いちばん早く反応します。災害や国際情勢のように急に起きたことは、まずここに出ます。
⑤消費者物価指数|モノとサービスの値段
家計が買うモノやサービスの値段を、まとめて指数にしたものです。3つの数字が使い分けられます。
| 呼び方 | 正式な名前 | 中身 |
|---|---|---|
| 総合 | 総合 | 全部入り |
| コア | 生鮮食品を除く総合 | 天候で値段が乱れる生鮮食品を外したもの |
| コアコア | 生鮮食品及びエネルギーを除く総合 | さらに電気代やガソリンも外したもの |
いつ出るか:全国は翌月20日前後。東京都区部だけは、全国に先行して当月末に出ます(中旬速報値)。
どこを見るか:コアの前年同月比が基本です。日本銀行が物価の目標に使っているのもこの系統です。
つまずきやすいところ:基準年の改定があります。現在は2025年を100とする2025年基準です。基準が変わると過去にさかのぼって指数が計算し直されるので、古い記事の数字とそのままつなげられない場合があります。
⑥実質賃金指数|物価を引いたあとの給料
名目の給料を消費者物価指数で割ったものです。給料が3%増えても物価が4%上がっていれば、買えるものは減ります。それを1本で見る数字が実質賃金です。厚生労働省の毎月勤労統計調査から出ます。
いつ出るか:対象月の翌々月の上旬に速報、その約3週間後に確報です。
どこを見るか:実質賃金指数の前年同月比。プラスなら、給料の伸びが物価の伸びを上回ったということです。
つまずきやすいところ:3つあります。
- 実質化に使う物価は、ニュースのコアCPIとは別の指数です。毎月勤労統計が使うのは「持家の帰属家賃を除く総合」で、コア(生鮮食品を除く総合)ではありません
- 速報と確報で数字が動きます。あとから届いた回答が加わって集計し直されるためです。2026年6月分は、実質賃金が速報+1.6%から確報+2.2%へ変わりました
- 6月と12月は賞与が入るので振れます。この2か月だけで判断せず、前後の月と並べて見ます
⑦完全失業率|働きたいのに働けていない人の割合
総務省統計局の労働力調査から出ます。分母は労働力人口、分子は完全失業者です。
この「完全失業者」の定義が、思っているより狭いところがあります。統計局はILOの国際基準に準拠して、3つの条件で決めていると説明しています。
- 仕事についていない
- 仕事があればすぐつくことができる
- 仕事を探す活動をしていた
いつ出るか:翌月末。2026年7月分は8月28日でした。
つまずきやすいところ:3つ目の条件です。統計局のQ&Aにこう書かれています。
仕事を探す活動をしていない人は、完全失業者には含まれません。
職探しをあきらめた人は、失業者から外れます。労働力人口からも外れて、非労働力人口に移ります。だから景気が悪くて求職をあきらめる人が増えると失業率は下がり、逆に景気が上向いて求職を再開する人が増えると、失業率は一時的に上がることがあります。数字が下がったから良い、とは限りません。
あわせて、就業者のほうも定義が広めです。月末1週間に1時間でも働けば就業者で、無給で家業を手伝っている家族従業者も就業者に入ります。これもILO基準に沿ったものです。
もうひとつ。完全失業率は、景気動向指数のなかでは遅行系列(Lg6)に採用されています。景気に遅れて動く指標として扱われている、ということです。
7つの関係
7つは横並びではありません。6つの統計があって、それを見た政府が1つの判断を出す、という構造になっています。
各指標の公表資料をもとに作成。発表までの間隔は目安。
左にあるものほど、中身が新しい期間の話をしています。右にいくほど、見ている期間が古くなります。
これとは別に、景気に対して早く動くか遅く動くかという分類もあります。景気動向指数の遅行系列9つのうち3つが、完全失業率(Lg6)・きまって支給する給与(Lg7)・消費者物価指数(Lg8)です。雇用・賃金・物価は、景気に遅れて動くものとして扱われています。
発表が早いかどうかと、景気に対して早く動くかどうかは別の話です。消費者物価指数は発表までが3週間ほどと早いほうですが、景気に対しては遅れて動く指標として扱われています。
だから僕は、こう使い分けています。いま何が起きているかを知りたいときは景気ウォッチャー調査とCI一致指数。本当に良くなったのかを確かめたいときは賃金・物価・失業率。そして全体の見方として月例経済報告を読みます。
毎月読むときに気をつけている3つのこと
1.速報と確報は違う数字です
実質賃金と景気動向指数は、同じ月のものが2回発表されます。あとから出るほうが正しい数字です。ニュースで流れるのはたいてい速報のほうなので、あとから静かに書き換わっていることがあります。
2.発表された月と、中身の月は違います
「8月に出た経済指標」と言っても、中身は4-6月期だったり6月だったり7月だったりします。何月の話をしているのかを取り違えると、結論がまるごと変わります。
3.基準改定があります
消費者物価指数は2025年基準、景気動向指数のCIは2020年=100です。基準が変わると過去の数字も計算し直されるので、古い数字とつなげるときは基準をそろえます。
毎月の結果はこちらにまとめています
この7つを毎月ひとつの記事にまとめています。それぞれの数字が「いつ時点のものか」を毎回書いています。
この記事で使った資料
- 内閣府「月例経済報告」
https://www5.cao.go.jp/keizai3/getsurei/getsurei-index.html - 内閣府「四半期別GDP速報」
https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sokuhou/sokuhou_top.html - 内閣府「景気動向指数の利用の手引」(CI・DIの定義、先行/一致/遅行の使い分け、採用系列)
https://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/di/di3.html - 内閣府「景気ウォッチャー調査」
https://www5.cao.go.jp/keizai3/watcher/watcher_menu.html - 総務省統計局「消費者物価指数(CPI)」
https://www.stat.go.jp/data/cpi/ - 厚生労働省「毎月勤労統計調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/30-1.html - 総務省統計局「労働力調査」および同 Q&A(完全失業者の定義)
https://www.stat.go.jp/data/roudou/qa-1.html
引用した文言は、各資料に書かれているものをそのまま載せています。発表日の間隔は2026年の実績にもとづく目安で、年によって数日前後します。
この7つを見たあとに、僕がやっていること
経済指標を見ても、明日どの株が上がるかは分かりません。僕がやっているのは、毎月この7つで全体の位置を確かめておいて、あとは会社を一社ずつ自分のものさしで採点することです。
実際に採点した会社の記録です。
いま自分がどれだけ持っているかは、こちらで公開しています。
免責事項
本記事は情報提供および筆者個人の記録を目的としたものであり、特定の投資行動を推奨・勧誘するものではありません。記載した内容は、内閣府・総務省統計局・厚生労働省が公表した資料にもとづき、筆者が2026年9月5日時点で確認したものです。発表日程や統計の定義は変更されることがあります。投資の最終的な判断は、ご自身の責任と調査に基づいて行ってください。
※本記事には広告(アフィリエイトリンク)を含む場合があります。
