システナ(2317)|12項目は○11・✕1。減益予想なのに配当は14円→18円【高配当株の通信簿⑥】
高配当株を一社ずつ採点するシリーズ、6社目はシステナ(2317・東証プライム)です。自動車や金融、通信の会社から仕事を受けて、システムをつくったり運用したりしているIT企業です。
結論から言いますと、12のものさしは○11・△0・✕1でした。これまでの5社でいちばん良い点数です。基準に届かなかったのは⑪PER(株価収益率)/PBR(株価純資産倍率)の1項目だけでした。
ただ、この会社には書いておきたいことがあります。会社自身が、来期は減益になると予想しています。それでも配当は14円から18円へ増やす計画です。その結果どうなるか。
2027年3月期の配当性向は、会社の予想どおりなら60.5%。僕のものさしで「1つでも当てはまったら見送る」と決めている一発アウトの線は60%です。いまの採点では○でも、会社が出した来期の数字を当てはめると、そこを超えます。
システナは、何をしている会社なのか
7つの事業は、売る相手も売るものも違う
システナは連結子会社9社と持分法適用関連会社3社を持つグループで、事業は7つに分かれています。「IT企業」のひとことで片づけると、中で何が起きているかが見えません。まず誰に何を売っているかから並べます。
| 事業 | 主なお客様 | 売っているもの |
|---|---|---|
| 次世代モビリティ | 完成車メーカー、部品メーカー | 車載ソフトウェアの設計・開発。北米での走行試験まで |
| プロジェクトマネジメントデザイン | 通信キャリア、通信機器メーカー、インターネットビジネス企業 | 通信サービスや社会インフラのシステムを、企画から設計・開発・検証・運用まで一貫して |
| デジタルインテグレーション | 損保、生保、銀行、官公庁 | 基幹システムの開発、クラウドとDXの導入支援 |
| IT&DXサービス | 通信、電機、官公庁、金融、医療、物流、小売、製造 | システムの運用・保守、ヘルプデスク、PMO、データ入力、大量出力、ソフトウェアテスト |
| ビジネスソリューション | 電機メーカー、外資・中堅企業 | サーバー、パソコン、周辺機器、ソフトウェアという「モノ」そのもの |
| DX&ストック型ビジネス | 中堅から大企業 | 自社のクラウドサービス「Canbus.」などを月額で |
| その他 | 日系企業、アメリカ企業、一般個人 | 米国拠点での技術支援、子会社によるソーシャルゲーム |
並べると、同じ会社の中に性質の違う3つの商売が入っているのが分かります。人の技術を売る受託開発(次世代モビリティ、プロジェクトマネジメントデザイン、デジタルインテグレーション、IT&DXサービス)、モノを仕入れて売る物販(ビジネスソリューション)、自社サービスを月額で売るサブスクリプション(DX&ストック型ビジネス)の3つです。利益の出方が、それぞれ違います。
売上の順番と、利益の順番が入れ替わる
| 事業 | 売上高 | 売上の構成比 | セグメント利益 | 利益の構成比 | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| ビジネスソリューション | 356億円 | 37.7% | 29.6億円 | 19.2% | 8.3% |
| IT&DXサービス | 219億円 | 23.2% | 31.5億円 | 20.5% | 14.4% |
| プロジェクトマネジメントデザイン | 153億円 | 16.2% | 33.4億円 | 21.7% | 21.9% |
| デジタルインテグレーション | 104億円 | 11.0% | 24.8億円 | 16.1% | 23.8% |
| 次世代モビリティ | 76億円 | 8.0% | 32.2億円 | 20.9% | 42.5% |
| DX&ストック型ビジネス | 28億円 | 3.0% | 2.5億円 | 1.6% | 8.8% |
| その他 | 8億円 | 0.9% | △0.3億円 | - | - |
| 連結 | 944億円 | 100% | 153.7億円 | 100% | 16.3% |
売上がいちばん大きいビジネスソリューションは、356億円を売って利益は29.6億円。利益率8.3%です。パソコンやサーバーを仕入れて企業に売る商売なので、売上は大きくなりますが利幅は薄くなります。
逆に、売上が5番目の次世代モビリティは76億円で32.2億円を稼いでいます。利益率42.5%。売上の8.0%しかない事業が、利益の20.9%を出しています。売上1円あたりの利益で見ると、ビジネスソリューションの5.1倍です。
この会社の利益率を16.3%と覚えると、実力を読み違えます。物販のビジネスソリューションを外した6事業で計算すると、売上588億円に対して利益124.1億円で、利益率は21.1%になります。売上の大きさが、そのまま稼ぐ力を表していない会社です。
利益率42.5%の事業は、携帯電話から来ている
次世代モビリティが急にできた事業なのかというと、そうではありません。会社は、この事業の背景にあるものを自社サイトでこう説明しています。
モバイル開発で進めてきたアジャイル手法やアプリケーションフレームワークを採用した開発は、SDV開発に必要なものとなっており
株式会社システナ「事業セグメント」次世代モビリティ事業
SDV(ソフトウェア・デファインド・ビークル)は、車の機能をソフトウェアで決める作り方のことです。携帯電話でAndroidとiOSの開発をやってきた経験と、そこで身につけた進め方が、そのまま車で必要になっている。会社はそう書いています。自動車業界では部品メーカーの最上位をTier1(ティアワン)と呼びますが、会社は自社をソフトウェアのTier1と位置づけています。
同じことが、プロジェクトマネジメントデザインでも起きています。こちらも出発点はモバイル端末の開発で、そこで培ったものを電力・防災・航空・交通といった社会インフラへ広げた事業です。
つまり、利益率の高い2つの事業は、どちらも携帯電話の開発から枝分かれしています。この2つを合わせると、売上では24.2%ですが、利益では42.7%を占めます。10年で営業利益率が8.0%から16.3%へ上がった理由の一つが、ここにあります。
デジタルインテグレーションは毛色が違い、金融系のシステム開発を半世紀以上続けてきた事業です。損保・生保・銀行という、止められないシステムを扱います。利益率23.8%は7事業で2番目です。
増えた利益33億円は、どこから来たのか
| 事業 | 売上の増減 | 利益の増減 | 増益への寄与 |
|---|---|---|---|
| 次世代モビリティ | +20億円 | +12.6億円 | 38.0% |
| プロジェクトマネジメントデザイン | △4億円 | +7.6億円 | 23.0% |
| ビジネスソリューション | +58億円 | +6.8億円 | 20.7% |
| デジタルインテグレーション | +16億円 | +5.2億円 | 15.8% |
| IT&DXサービス | +14億円 | +3.0億円 | 9.0% |
| その他 | +2億円 | △0.1億円 | - |
| DX&ストック型ビジネス | +1億円 | △2.1億円 | - |
次世代モビリティは、売上を20億円増やして利益を12.6億円増やしました。増益33億円の38.0%をこの1事業が作っています。
ビジネスソリューションは、売上を58億円増やして利益は6.8億円。増収額ではいちばん大きいのに、増益への寄与は20.7%です。物販なので、売上が増えてもその利幅の分しか利益は付いてきません。
プロジェクトマネジメントデザインは、売上が4億円減っているのに利益は7.6億円増えました。利益率が16.5%から21.9%へ上がっています。売上を追わずに中身を入れ替えた1年だった、と読めます。
7つのうち1つだけ、利益が減っている
DX&ストック型ビジネスです。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 27.2億円 | 28.4億円 | +3.9% |
| セグメント利益 | 4.6億円 | 2.5億円 | △45.4% |
| 利益率 | 16.9% | 8.8% | △8.1ポイント |
ここは、ノーコードツール「Canbus.」などの自社クラウドサービスを月額で提供している事業です。受託開発と違って、契約が積み上がれば翌年も売上が残ります。会社が将来の柱として置いている事業、という位置づけになります。
その事業が、売上は3.9%伸びたのに利益は45.4%減りました。利益率は16.9%から8.8%へ下がり、物販のビジネスソリューション(8.3%)とほぼ同じ水準になっています。規模も、売上で全体の3.0%、利益で1.6%です。
残りの6事業がそろって利益を増やした年に、ここだけが逆を向きました。この会社の収益は受託と物販で立っていて、積み上がるはずのサブスクリプションはまだ柱になっていない。数字はそう示しています。
特定の取引先には寄りかかっていない
7つの事業がそれぞれ違う業界を相手にしている会社なので、取引先の偏りも確かめておきます。決算短信には、こう書かれています。
連結損益計算書の売上高の10%以上を占める顧客が存在しないため記載を省略しております。
株式会社システナ 2026年3月期 決算短信(2026年5月13日)
売上の1割を超える取引先が1社もない、ということです。1社が抜けても会社全体が傾く形にはなっていません。
数字の大きさを、比べる相手を置いて確かめる
| 項目 | システナ | 比べる相手 | 見え方 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 944億円(2026年3月期) | ― | ― |
| 総資産 | 611億円 | ― | ― |
| 総資産回転率 | 1.55回 | エーアイテイー2.12回/東テク1.48回/アイティフォー0.82回/タクミナ0.77回/東計電算0.33回 | 6社で2番目に軽い |
| 従業員数 | 5,301名(1人あたり1,781万円) | 東テク2,855名(1人あたり5,955万円)/エーアイテイー1,165名(同5,013万円) | 人数は最多、1人あたりは最少 |
| 業種 | 情報・通信業(プライム市場159社) | アイティフォーと同じ業種 | ― |
| 時価総額 | 1,797億円 | 東テク1,846億円/東計電算1,262億円/エーアイテイー554億円/アイティフォー465億円/タクミナ122億円 | シリーズで2番目 |
| 規模区分 | TOPIX Small 1 | 東テクと同じ | ― |
| 市場区分 | 東証プライム | ― | ― |
| PER | 14.2倍 | 情報・通信業平均 18.4倍 | 0.77倍 平均より低い |
| PBR | 3.81倍 | 情報・通信業平均 2.1倍 | 1.8倍 割高 |
売上高・総資産・従業員数はシステナの2026年3月期決算短信および第44期有価証券報告書。時価総額は発行済株式数425,880,000株×株価422円(2026年9月30日終値)。業種・規模区分は日本取引所グループ「東証上場銘柄一覧」2026年9月30日時点および「TOPIXニューインデックスシリーズ 定期選定結果」。業種平均は同「規模別・業種別PER・PBR」2026年9月の単純平均。他の5社の数字は各記事を書いた時点のもので、株価に連動する項目は現在の値と異なります。
目立つのは1人あたり売上高1,781万円です。東テクの5,955万円、エーアイテイーの5,013万円と比べると3分の1以下しかありません。
これは効率が悪いという話ではなく、商売の形の違いです。東テクやエーアイテイーは商品や運賃を右から左へ流すので、1人あたりの売上が大きく出ます。システナは人がシステムをつくって売上になる会社なので、売上は人数におおむね比例します。実際、従業員は10年で2,585名から5,301名へ2.1倍、売上も463億円から944億円へ2.0倍と、ほぼ同じ速さで増えています。
そして営業利益率は16.3%。人で稼ぐ商売としては高い水準です。
僕の12項目で採点してみる
採点します。基準は高配当株の選び方|FP1級の僕が使っている12のものさしにまとめています。今回も会社が公表している資料と、取引所が公表している統計だけを使いました。
| 使った数字 | 出典と時点 |
|---|---|
| 2021〜2026年3月期の業績・配当 | システナ 決算短信(2022年3月期・2024年3月期・2026年3月期) |
| 2017〜2020年3月期の業績・配当 | 第38期・第40期・第44期 有価証券報告書の「主要な経営指標等の推移」および連結損益計算書 |
| 直近の四半期 | 2027年3月期 第1四半期決算短信 2026年7月30日 |
| 配当方針・訴訟の有無・従業員数 | 第44期 有価証券報告書 2026年6月23日 |
| 株価 422円 | 日本取引所グループ「月間相場表(株式相場表)」2026年9月30日終値 |
| 業種平均PER・PBR | 同「規模別・業種別PER・PBR」2026年9月 |
| 市場平均の配当利回り | 同「株式平均利回り」2026年9月(プライム市場) |
| 業種区分・規模区分 | 同「東証上場銘柄一覧」2026年9月30日時点 |
| 評価項目 | ひとことメモ | 判定 |
|---|---|---|
| ①売上 | 463億円(2017年3月期)→944億円(2026年3月期)。10年で2.0倍。減収は2021年3月期の1回だけで、幅も5.7% | ○合格 |
| ②EPS | 5.61円→31.65円(2回の株式分割を調整)。10年で5.6倍 | ○合格 |
| ③営業利益率 | 8.0%→16.3%。優秀の目安10%を2019年3月期から8期続けて上回る | ○合格 |
| ④自己資本比率 | 64.9%。直近7期は安心ラインの60%超。10期で最も低い2017年3月期でも58.2% | ○合格 |
| ⑤営業CF | 10期すべて黒字。22億円→133億円 | ○合格 |
| ⑥現金 | 76億円→298億円。2025年3月期だけ自己株買いで減ったが、長期では増加 | ○合格 |
| ⑦1株配当 | 2.25円→14円。減配・無配なし。据え置きは2021年3月期の1回だけ | ○合格 |
| ⑧配当性向 | 実績44.2%。10期すべて60%未満。ただし2027年3月期の会社予想は60.5%で、一発アウトの線を超える | ○合格 |
| ⑨配当利回り | 4.27%(予想配当18円÷株価422円)。実績配当14円なら3.32%で要検討ゾーン | ○合格 |
| ⑩ROE / ROA | ROE 31.4%・ROA 18.5%。基準はROE10%・ROA8%で、どちらも大きく上回る | ○合格 |
| ⑪PER / PBR | PER 14.2倍・PBR 3.81倍。基準はPER12倍以下・PBR1倍前後 | ✕未達 |
| ⑫不祥事 | 第44期有価証券報告書に「訴訟」「係争」の語が1度も出てこない | ○合格 |
株価に連動する指標は、計算の過程も置いておきます。
| 指標 | 計算 | 結果 |
|---|---|---|
| PER(株価収益率) | 株価422円 ÷ 1株当たり当期純利益29.74円(2027年3月期・会社予想) | 14.2倍 |
| PBR(株価純資産倍率) | 株価422円 ÷ 1株当たり純資産110.82円(2026年3月期末) | 3.81倍 |
| 配当利回り | 1株配当18円(2027年3月期・会社予想) ÷ 株価422円 | 4.27% |
DOE(純資産配当率)も確かめます。会社が短信に載せている純資産配当率は13.9%で、これは期中平均の自己資本で計算した値です。期末の1株純資産で計算し直すと、14円÷110.82円=12.63%。これをPBR3.81倍で割ると3.32%になり、実績配当14円で計算した利回りと一致しました。
›採点の基準(12項目のものさし)を見るタップで開く
| ①売上 | 右肩上がりか/増減が激しすぎないか |
| ②EPS(1株当たり利益) | 右肩上がりか |
| ③営業利益率 | 5%以上(10%を超えれば優秀)/右肩上がりか |
| ④自己資本比率 | 最低40%・安心60%・優秀80% |
| ⑤営業CF(営業活動によるキャッシュ・フロー) | 毎年黒字/長期的に増加傾向(過去10年で赤字があれば対象外) |
| ⑥現金 | 長期的に現金が増えているか |
| ⑦1株配当 | 減配・無配がないか/配当金の成長性はあるか |
| ⑧配当性向(配当総額÷純利益) | 健全30〜50%・要警戒50〜60%・60%以上は対象外 |
| ⑨配当利回り | 買い3.75%以上・要検討3〜3.75%・3%以下は対象外 |
| ⑩ROE(自己資本利益率)/ ROA(総資産利益率) | ROE 10%以上・ROA 8%以上 |
| ⑪PER(株価収益率)/ PBR(株価純資産倍率) | PER 12倍以下・PBR 1倍前後 |
| ⑫不祥事 | 不祥事を起こしていないか |
10年で、売上は2.0倍・利益率は2倍になった
出典:システナ 決算短信・有価証券報告書 各期。売上高は百万円を億円に四捨五入。営業利益率は2021年3月期以降が会社公表値、2017〜2020年3月期は営業利益÷売上高で算出(公表されている期では同じ値になることを確認しています)。
463億円から944億円へ。10年で2.0倍です。減収になったのは2021年3月期の1回だけで、幅も5.7%でした。
もっと目を引くのは下段です。営業利益率が8.0%から16.3%へ、ちょうど2倍になりました。売上が2.0倍で利益率も2倍なので、営業利益は37億円から154億円へ4.2倍に増えています。
この図を読むときに、2つ書き添えておきます。
1つめは会計基準です。2022年3月期の期首から収益認識会計基準を適用し、一部のライセンス販売を許諾期間にわたって計上する方法に変えています。ただし会社は短信で「当連結会計年度の売上高は146百万円減少し」としており、653億円に対して0.2%です。並べて読んでも段差は出ていません。
2つめは株式分割です。システナはこの10年で2回、株式を分割しています。2018年6月1日に1株を4株へ、2021年12月1日にもう一度1株を4株へ。合わせて16倍です。次の図のEPSと1株配当は、すべて分割後のいまの株数にそろえて並べました。
✕は⑪だけ。ただし⑧は、来期の予想が線に乗る
出典:同上。EPSと1株配当は2018年6月1日と2021年12月1日の株式分割を調整し、現在の株数にそろえています。配当性向は1株配当÷EPSで、会社が公表している2021年3月期以降の6期はすべて公表値と一致しました。
上段の青がEPS(1株当たり利益)、黄色が1株配当です。10年でEPSは5.6倍、配当は6.2倍になりました。減配はゼロで、据え置きは2021年3月期の1回だけです。
下段の配当性向を見ると、10期すべて60%の線より下にあります。いちばん高かったのが2024年3月期の53.6%で、直近の2026年3月期は44.2%。⑧を○にしたのはこの実績です。
右端の薄い棒と赤い点が、会社が出した2027年3月期の予想です。ここだけが線の上に出ています。
減益を見込みながら、配当は14円から18円へ
会社が5月13日に出した2027年3月期の予想を、実績と並べます。
| 項目 | 2026年3月期(実績) | 2027年3月期(会社予想) | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 944億円 | 980億円 | +3.8% |
| 営業利益 | 154億円 | 160億円 | +3.9% |
| 経常利益 | 161億円 | 160億円 | △1.1% |
| 純利益 | 113億円 | 106億円 | △6.0% |
| EPS | 31.65円 | 29.74円 | △6.0% |
| 1株配当 | 14円 | 18円 | +28.6% |
| 配当性向 | 44.2% | 60.5% | +16.3ポイント |
売上と営業利益は増える予想なのに、純利益だけが6.0%減る見込みです。配当はそこに28.6%の増配をかぶせます。分母が減って分子が増えるので、配当性向は44.2%から60.5%へ16.3ポイント上がります。
配当性向60.5%というのは、1年で稼いだ利益の6割を配当に回すということです。100円儲けたら60円を配り、手元に残すのは40円。残った40円で、人を採り、開発に回し、将来のための投資をすることになります。
この60.5%は、会社自身が決算短信に書いている数字です。僕が計算した推定値ではありません。1株配当18円を、会社予想のEPS29.74円で割ると60.5%になります。
会社は「連結配当性向40%以上」を目標に掲げています
なぜ減益を見込みながら増配するのか。還元方針が有価証券報告書に書かれています。
当社は、株主の皆様に対する利益還元を経営上の重要課題の一つとして認識しており、安定配当の継続をベースとした上で、経営成績に応じた利益配分を行うことを基本方針としております。配当につきましては、各事業年度の業績および財務状況ならびに経営基盤の強化と今後の事業展開等を勘案し、連結配当性向40%以上を目標に積極的に実施してまいります。
株式会社システナ 第44期 有価証券報告書(2026年6月23日)
「連結配当性向40%以上」が目標。この会社にとって配当性向が上がっていくのは、方針どおりの動きです。実際、2023年3月期からは42.4%・53.6%・51.8%・44.2%と、4期続けて目標の40%を上回っています。
方針にはもうひとつ、こう続きます。「自己株式の取得につきましても、財務状況や株価の推移等を勘案しつつ、利益還元策の一環として機動的に実施してまいります」。
ここで、僕が自分の12のものさしに足した但し書きを使います。配当性向が60%を超えていても、その場で切り捨てない。会社がどういう方針で配っているかを読み、自己株買いまで含めた「総還元性向」を確かめてから決める。2社目のアイティフォーを採点したときに足したルールです。
システナの自己株買いを、キャッシュ・フロー計算書で確かめました。
| 項目 | 2025年3月期 | 2026年3月期 |
|---|---|---|
| 自己株式の取得による支出 | 98.95億円 | 0億円 |
| 配当金の支払額 | 40.95億円 | 43.10億円 |
| 配当金総額(その期に対応する分) | 44.53億円 | 50.26億円 |
| 純利益 | 84.80億円 | 113.12億円 |
| 総還元性向 | 169.2% | 44.4% |
自己株式の取得による支出と配当金の支払額は第44期有価証券報告書の連結キャッシュ・フロー計算書。配当金総額は各期の決算短信。総還元性向は(配当金総額+自己株式の取得による支出)÷純利益で筆者が計算しました。
2025年3月期に99億円の自己株買いをしています。配当と合わせると、その期の純利益の1.7倍を株主に返した計算です。一方、2026年3月期の自己株買いはほぼゼロでした。方針に書いてあるとおり、年によって大きく振れます。
つまりこの会社の配当性向は、自己株買いをしない年に上がるという形をしています。2027年3月期の60.5%も、その流れの中にあります。
財務のほうにも苦しさは見当たりませんでした。手元の現金は298億円、自己資本比率64.9%、営業キャッシュ・フローは133億円で10期すべて黒字です。配当総額50億円は営業キャッシュ・フローの37.8%に収まっています。
それでも、僕のものさしは比率で線を引いています。実績の44.2%は○、会社予想の60.5%は線の向こう側。いまの採点では○にしましたが、来期の決算が予想どおりに出れば、ここは✕に変わります。
唯一の✕は⑪──PERは業種平均より低く、PBRだけが高い
株価側を見ます。2026年9月30日の終値は422円でした。
| 指標 | システナ | 情報・通信業(プライム159社) | 倍率 |
|---|---|---|---|
| PER(株価収益率) | 14.2倍 | 18.4倍 | 0.77倍 |
| PBR(株価純資産倍率) | 3.81倍 | 2.1倍 | 1.8倍 |
| 配当利回り | 4.27% | プライム市場の有配会社平均 2.26% | 1.9倍 |
業種平均は日本取引所グループ「規模別・業種別PER・PBR」2026年9月の単純平均。市場平均利回りは同「株式平均利回り」2026年9月のプライム市場・有配会社平均(月中平均)。
PERは業種平均の0.77倍。利益に対する値段の付き方は、同業の平均より安いほうです。基準の12倍以下には届きませんが、割高に買われている形ではありません。
離れているのはPBRです。3.81倍は業種平均の1.8倍。ただ、この高さにも理由があります。
PBR=PER×ROEという関係があります。期末の1株純資産で計算したROE(自己資本利益率)は31.65円÷110.82円=28.6%。これに実績PER13.3倍(422円÷31.65円)を掛けると3.81倍になり、実際のPBRと一致します。
つまりPBRが高いのは、株価が高すぎるからではなく、ROEが高いからです。会社が公表しているROEは31.4%。基準の10%の3倍あります。
ROEがここまで高いのは、持っている資産が軽いからでもあります。システナの総資産は611億円で、売上944億円に対して総資産回転率1.55回。設備ではなく人で稼ぐ商売なので、大きな資産を抱えずに済みます。⑪の基準は「資産に対して安く買う」という考え方で引いた線なので、この形の会社とは相性が悪い。それは承知のうえで、基準どおり✕を付けています。
直近の1Qは増収増益。会社の減益予想とは逆を向いている
2026年7月30日に、2027年3月期の第1四半期(2026年4月1日〜6月30日)の決算が出ました。
| 項目 | 1Qの実績 | 前年同期比 | 通期予想への進捗 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 238億円 | +5.5% | 24.3% |
| 営業利益 | 38億円 | +9.0% | 24.0% |
| 経常利益 | 40億円 | +6.3% | ― |
| 四半期純利益 | 27億円 | +3.1% | 25.1% |
進捗率は4分の1前後で、通期予想どおりのペースです。業績予想の修正もありません。
ただ、中身を見ると1Qは純利益が3.1%増えています。会社の通期予想は6.0%の減益です。つまり会社は、この先の3四半期で利益が前年を下回ると見込んでいることになります。
その理由は、短信には書かれていませんでした。だからここでは推測しません。分かっているのは、会社が減益予想を置いたまま増配を決め、その結果として配当性向が60.5%になる、という事実だけです。
自己資本比率は第1四半期末で67.8%、現金は291億円。財務は変わらず厚いままです。
まとめ ― 基準に届かなかったのは、1項目だけ
12項目は○11・△0・✕1。シリーズ6社でいちばん良い点数でした。
- ○①②③ 10年で売上2.0倍、EPS5.6倍、営業利益率は8.0%から16.3%へ。減収は1回だけで幅も5.7%
- ○④⑤⑥ 自己資本比率64.9%、営業キャッシュ・フローは10期すべて黒字、現金は76億円から298億円へ
- ○⑦⑧⑨ 減配ゼロ、配当は10年で6.2倍。配当性向の実績は44.2%で、利回りは予想配当18円なら4.27%
- ○⑩⑫ ROE31.4%・ROA18.5%。有価証券報告書に訴訟の記載なし
- ✕⑪ PERは業種平均の0.77倍で基準に近いものの12倍には届かず、PBR3.81倍は業種平均の1.8倍
これまでの5社は、過去の数字のどこかに✕が付きました。配当の原資が一時的な特別利益だった東計電算、還元方針を読み違えかけたアイティフォー、直近が大幅減益だったタクミナ、株価だけが外れた東テク、配当性向74.0%のエーアイテイー。
システナはそのどれとも違いました。過去の数字には、ほとんど✕が付かない会社です。その代わり、✕になりそうなものがこれからにあります。
会社が出した2027年3月期の予想は、純利益が6.0%減って、配当は28.6%増える。そのとおりになれば配当性向は60.5%で、一発アウトの線を超えます。いま○を付けた⑧は、1年後には✕に変わっている可能性がある、ということです。
次に見るところははっきりしています。純利益が本当に減るのかどうかです。第1四半期は3.1%の増益で、会社の予想とは逆を向いていました。このまま増益で着地すれば配当性向は60%を下回り、⑧は○のままになります。分子(配当18円)はもう決まっているので、動くのは分母だけです。
僕はこの会社を、しばらく様子見にします
12項目の点数はシリーズでいちばん良く、過去の数字に弱いところがほとんどありません。それでも今すぐ結論を出さないのは、⑧が1年後に✕へ変わるかどうかが、会社の予想が当たるか外れるかで決まるからです。四半期の決算をあと2回見てからのほうが、手元の材料が増えます。
見ていくのは、次の3つです。
- 純利益が、本当に6.0%減るのか。減らなければ配当性向は60%を下回り、⑧は○のまま残ります。第1四半期は3.1%の増益で、会社の予想とは逆を向いていました
- 次世代モビリティが、利益率42.5%を保てるか。増益33億円の38.0%をこの1事業が作っています。売上では8.0%しかない事業なので、ここが落ちると会社全体の利益率が下がります
- DX&ストック型ビジネスが戻るか。7事業で唯一、利益が45.4%減った事業です。ここが伸び始めれば、受託と物販に寄っている収益の形が変わっていきます
この3つが見えてくるのは、次に出る第2四半期の決算と、その次の第3四半期の決算です。それまでは数字を取りに行くだけにして、増やすか減らすかの話はそのあとにします。
もちろん、僕の見方が間違っている可能性も十分にあります。あくまで一個人の備忘録として、読んでいただければ幸いです。
高配当株の通信簿シリーズ
同じ12のものさしで、一社ずつ採点しています。
- 【通信簿①】東計電算(4746)|利回り7%でも僕が買わない理由
- 【通信簿②】アイティフォー(4743)|利回り4.8%でも僕が迷う理由
- 【通信簿③】タクミナ(6322)|12項目は通ったのに、僕が様子を見ている理由
- 【通信簿④】東テク(9960)|10期連続増配なのに、僕が買えない理由
- 【通信簿⑤】エーアイテイー(9381)|利回り4.74%、配当性向74%
採点に使う考え方は、この2本にまとめています。
相場全体の位置は、毎月この7つで確かめています。
僕がこういう株を買っている証券会社について
「こういう高配当株って、どこで買っているんですか?」と、たまに聞かれることがあります。僕は、SBI証券を10年以上使っています。理由やメリットは長くなるので、別の記事にまとめました。証券会社選びで迷っている方は、よかったらこちらもどうぞ。
SBI証券の魅力を徹底解説!初心者にもわかりやすいメリットまとめ
免責事項
本記事は情報提供および筆者個人の記録を目的としたものであり、特定銘柄の売買を推奨・勧誘するものではありません。記載した数値は、株式会社システナが公表した決算短信・有価証券報告書、および日本取引所グループが公表した統計にもとづき、筆者が2026年10月15日時点で確認・計算したものです。1株当たりの数値は、2018年6月1日と2021年12月1日に行われた株式分割を調整し、現在の株数にそろえています。正確性・最新性を保証するものではなく、とくに株価に連動する指標(PER・PBR・配当利回り)は日々変動します。投資の最終的な判断は、ご自身の責任と調査に基づいて行ってください。
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